磨き方などは、口腔ケアの基本介助者が行う口腔ケアのページと同じです。

(A)口腔周辺領域の解剖学的断面図
谷本啓二:老年者の摂食・嚥下機能障害におけるVideofluorographyの役割:歯界展望Vol.91 No.2 1998-2より
(B)摂食・嚥下運動の時期
時期 食物の状態 障害が起きる疾患
先行期 口腔に入る前 痴呆・視力障害・球麻痺等
準備期 捕食し、咀嚼して食塊にする 口腔周囲筋麻痺・舌萎縮・多数歯欠如・球麻痺等
口腔期 舌により食塊を咽頭に移送する 口腔周囲筋麻痺・舌萎縮・多数歯欠如・球麻痺・パーキンソン病等
咽頭期 喉頭挙上、気道閉鎖して食道に移送する 仮性球麻痺・パーキンソン病等
食道期 食道に流入 食道炎・食道癌・食道アカラシア・食道狭窄等
*球麻痺:筋萎縮性側索硬化症等、延髄の障害により構音障害・嚥下障害・舌萎縮・舌れん縮・声帯麻痺の症状を呈する。
*仮性球麻痺:多発性脳梗塞(脳血管性痴呆)等、両側性大脳半球の障害により、構音障害・嚥下障害・下顎反射亢進・情動失禁(ちょっとしたことでひどく笑ったり泣いたりする)の症状を呈する。
(C)摂食・嚥下障害の原因
(1)加齢による機能減退
(2)局所に原因があるもの
口腔・咽頭周囲の炎症・腫瘍・形態異常・外傷・う蝕等
(3)全身疾患に原因があるもの
腫瘍・脳性麻痺・脳血管障害・パーキンソン病・痴呆・重症筋無力症・多発性硬化症・筋ジストロフィー・筋萎縮性側索硬化症等
(4)心因性のもの
ヒステリー・過食症・拒食症等
(D)高齢者に見られる加齢変化
(1)口腔・顎 鈴木美保ほか:摂食・嚥下リハビリテージョンマニュアル
才藤ほか編、医学書院、東京、1996.25より
・舌、舌筋の下垂
・多数歯の欠如
・顎、舌の不随運動
・咀嚼筋の筋力低下
・口輪筋、頬筋の筋力低下
・口腔内感覚の低下
・唾液分泌の低下
・顎関節の異常
(2)咽頭・喉頭
・喉頭、舌骨の挙上減少
・喉頭下垂
・喉頭閉鎖不全
・咽頭括約筋機能不全
(F)摂食・嚥下診査
(1)一般診査
@意識障害・痴呆の有無
意識障害や痴呆のある場合、摂食・嚥下障害が存在すると考える。
A口腔内診査
残存歯、義歯、咬合状態、歯周組織、口腔粘膜、舌、口腔周囲筋等の診査。
口腔内所見 嚥下時の異常運動 機能不全内容 対応する治療 指導・訓練内容
すれ違い咬合 下顎の固定不全 喉頭挙上不全 嚥下補助床 嚥下訓練
前歯部喪失 舌の前方突出 食塊移送不全 嚥下補助床 舌・口唇筋訓練
臼歯部喪失 舌の側方突出 食塊形成不全 嚥下補助床 舌・頬筋訓練
義歯未装着/粘膜過敏 下顎固定不全 喉頭挙上不全 脱感作床 脱感作療法
舌の前方突出 食塊移送不全
舌の側方突出 食塊形成不全
向井美惠:老年者の摂食・嚥下機能とリハビリテーション 歯界展望Vol/91 No.2 1998-2より一部改変
B構音障害診査
口唇音(パ)
「ファ」に聞こえる 口唇閉鎖不全 「パ」「バ」「マ」行の訓練
「マ」に聞こえる 軟口蓋挙上不全 「パ」「バ」行の訓練
舌尖音(タ)
「ア」に聞こえる 舌尖挙上不全 「タ」「ダ」「ナ」行の訓練
「ナ」に聞こえる 軟口蓋挙上不全 「タ」「ダ」行の訓練
奥舌音(カ)
「ア」に聞こえる 奥舌挙上不全 「カ」「ガ」行の訓練
                                        日本歯科衛生士会編:歯科保健指導ハンドブック 医師薬出版より一部改変
D声質の診査
食後や夕方に湿性嗄声「ゼロゼロした声」があれば誤嚥を示唆。
(2)摂食・嚥下アセスメント(課題分析)
向井美惠:老年者の摂食・嚥下機能とリハビリテーション 歯界展望Vol/91 No.2 1998-2より
(2)RSST(反復唾液嚥下テスト)
@ 被検者を座位とする。
A 検者は被検者の喉頭隆起・舌骨の指腹をあて、30秒間嚥下運動を繰り返させる。被検者には「できるだけ何回も”ごっくん”と飲み込むことを繰り返してください。」と説明する。喉頭隆起・舌骨は嚥下運動に伴って指腹を乗り越えて上前方に移動し、また元の位置へと戻る。この下降運動を確認し、嚥下完了時点とする。
B 嚥下運動時の喉頭挙上・下降運動を触診で確認し、30秒間に起こる嚥下回数を数える。高齢者では30秒間に3回できれば正常と判断する。
C 嚥下障害患者は1回目の嚥下運動はスムーズに起きても、2回目以降喉頭挙上が完了せず、喉頭隆起・舌骨が上前方に十分移動しないまま途中で下降してしまう場合がある。これを真の嚥下運動と間違わぬよう注意する。
D 口腔乾燥が強く、嚥下運動を阻害していると考えられる場合には、人口唾液(サリベート)や少量の水を口腔内に噴霧する。
才藤栄一:老年者の摂食・嚥下障害の評価法と訓練の実際 歯界展望Vol.91 No3 1998-3より
(3)テストフード(プリン等)
検査結果 機能不全内容 指導・訓練内容
嚥下時のむせ 嚥下機能不全 嚥下訓練、VFで要精査
舌背面へ残留 食塊形成不全 舌筋訓練(嚥下補助床)
口腔前庭へ残留 食塊形成不全 舌・頬筋訓練(嚥下補助床)
食物移送不全 舌・口唇訓練(嚥下補助床)
向井美惠:老年者の摂食・嚥下機能とリハビリテーション 歯界展望Vol/91 No.2 1998-2より
(4)VF検査(ビデオ嚥下造影法)
・造影剤2倍希釈イオパミロン®を用いた口腔・咽頭相の嚥下透視X線検査
・通常摂食している姿勢で側面撮影し、気管に造影剤が誤嚥しているようならば、代償姿勢(@顎引き/下向きA顎上げ/上向きB障害側に顔を向けるC健常側に首を傾けるD仰臥位)で撮影し、最も誤嚥しにくい姿勢を判定する。
谷本啓二:老年者の摂食・嚥下機能障害におけるVideofluorographyの役割:歯界展望Vol.91 No.2 1998-2より
(5)摂食時の診査
項目 評価内容 機能不全内容 指導・訓練内容
テーブル・いすの位置 目・手・口の非協調 食具からの捕食不全 摂食姿勢の調整・捕食指導
姿勢:体幹の安定性 ずり下がり・横倒れ 摂食姿勢の調整
姿勢:頸部の角度 前頸筋の運動制限 嚥下機能不全 摂食姿勢の調整
姿勢:股関節の角度 下肢と体幹の角度 摂食・嚥下緒筋の緊張 摂食姿勢の調整
姿勢:膝関節の角度 下肢と体幹の角度への影響 伸展反応の誘発 摂食姿勢の調整(食具の工夫)
食具と食器の形態 捕食機能との不一致 食具からの捕食不全 食具の工夫・捕食指導
食物形態 硬さ・大きさ・粘調性の不適合 咀嚼・嚥下機能不全 食形態指導・咀嚼、嚥下訓練
向井美惠:老年者の摂食・嚥下機能とリハビリテーション 歯界展望Vol/91 No.2 1998-2より
(F)時期別訓練一覧表
先行期 切迫的摂食防止の指導
頭頸部ストレッチ運動
準備期・口腔期 摂食姿勢の指導
食物形態の指導
食器形態の工夫
捕食訓練
脱感作療法
口の体操
口腔周囲筋刺激訓練
口腔周囲筋ストレッチ訓練
口腔周囲筋増強訓練
構音訓練
Tossing法
咽頭期 誤嚥を減らす体位指導
食物形態の指導
頸部可動域訓練
寒冷刺激法(thermal stimulation)
声門閉鎖訓練(pushing,pulling,lofting exercise)
嚥下パターン訓練(supraglottic swallow)
Mendelsohn手技
多数回嚥下法
腹式呼吸訓練
鼻呼吸訓練
空嚥下
横向き嚥下
うなずき嚥下
(G)摂食・嚥下指導及び訓練方法
(1)頭頸部ストレッチ運動
頸部、体幹がまっすぐになるよう姿勢を正し、深呼吸を行う。次に首を前に倒し、5〜10カウント数えながらゆっくりストレッチする。同様に後ろ、右向き、左向き、左右回旋をそれぞれ2〜3回ずつ行う。肩部については両肩を上げて5〜10カウント数えたあと力を抜く。これを3〜5回繰り返す。
(2)摂食姿勢の指導
基本は頸部は舌背が床と閉口になる角度(舌背平行)、体幹と股関節、膝関節の角度は90°、足の裏が床やベッドについている姿勢。病状によって仰臥位を少し起こした状態で摂食する場合は頸部の角度に注意し、後頭部に枕などを置いて頸部を少し前屈させるような誤嚥防止姿勢を確保する。股関節の角度が大きくなる場合は、呼吸・嚥下筋群の緊張や伸展反射の誘発防止に、膝関節を屈曲させて体幹と下肢の角度を大きくさせない。麻痺があれば健側を下方に、患側を上方にする場合も有効。摂食時間は30〜40分。食後は最低30〜2時間は胃食道逆流現象防止のため、臥位を取らぬよう指導する。
(3)脱感作療法
経口摂取されていなかったり、口腔ケアが行われていないなど、口腔内に刺激がほとんどなかったり、神経系の中枢に病変が起きると感覚が過敏になることがある。このような場合は歯ブラシが口腔内に触れただけで痛がることがあるので、まず指で歯肉、頬の内側などを触れていき、徐々に綿球、スポンジブラシ、軟毛歯ブラシと段階を踏んで過敏を取り除いてゆく。
(4)口の体操
日本医師会雑誌 臨時増刊 Vol.118 No.9-1より
(5)口腔周囲筋刺激訓練
筋の廃用を防止する目的で、電動歯ブラシを使い、頬、口唇、舌などに振動を与える。電動歯ブラシの背の部分を頬の内側から外側に押すように当て、ゆっくりと前後、上下に動かす。口唇も同様に行い、全体で5〜10分を目安にする。舌は前に突出させ、電動歯ブラシを奥から手前に動かす。右、左、中央とそれぞれ5〜10回行う。舌を突出することが困難な場合、術者がガーゼで舌を把持して行う。
(6)口腔周囲筋ストレッチ訓練
・筋の硬縮を防止する目的で頬や口唇、舌などに対して行う。
・頬に対しては術者の指を口腔内に入れ、頬の内側を強く押し、指を奥から手前や上下に動かしたり、本人自身に頬を膨らませたりへこませたりする。
・口唇に対しては、突出(「ウ」の形)と横引き(「エ」の形)を10〜20回繰り返し行ったり、上唇、下唇をそれぞれ左側、右側、中央の3つに分けて10カウントしながらつまんだり伸ばしたりのストレッチを行う。
・舌は前方、左右、上下に突き出す動作を行う。本人が自力でできない場合は、介護者がガーゼで舌を把持して行う。
(7)口腔周囲筋増強訓練
・口唇閉鎖強化のため、大き目のボタンにフロスを通し、口唇に把持させたまま術者がフロスを引っぱる。術者のフロスを引っ張る力に抵抗するように、口唇に力を入れてもらう。
・舌運動強化のため、舌圧子(なければアイスクリーム棒やスプーン)を使って術者が舌を押し、それに抵抗するように舌を動かしてもらう。
・咬筋強化のため、左右の臼歯部で舌圧子を10回ずつ交互にかませる。スルメやガムをガーゼで包み、フロスで縛って保持しながらかます方法も有効である。
(8)構音訓練
(F)診査(1)一般診査B構音障害診査の項を参照。
(9)Tossing法
舌切除の患者等で口腔から咽頭へ食塊を送り込むのが困難な場合、重力を利用した方法で、頸部を伸展させて食塊を咽頭部へ送り込む。咽頭部へ到達したら誤嚥防止のために直ちに顎引き姿勢に変える。
(10)誤嚥を減らす体位指導
・頭部の前屈(頸部屈曲)
・頭部の患側への回旋
・体幹の後傾(舌機能低下で食塊が咽頭に移送できない場合)(口腔期の障害)
・体幹の健側への側傾
(11)寒冷刺激法(thermal stimulation)のうちの「咽頭のマッサージ」について
嚥下誘発部位である軟口蓋、舌根部、咽頭後壁に寒冷刺激を与え、嚥下を誘発させる。嘔吐反射の程度や嚥下誘発部位は個人差があるため、手前から徐々に奥に進めていく。
@割り箸の先に綿やガーゼを巻いたものを冷凍庫で凍らせ、それを嚥下誘発部位に当ててマッサージしたり数秒間軽く触れておく。
A嚥下反射が誘発され始めたら棒を抜き、空嚥下させる。
岡田澄子:摂食・嚥下リハビリテーションマニュアル.
才藤ほか編,医学書院,東京,1996,59より
(12)声門閉鎖訓練(pushing exercise)
力をいれて机を押しながら「えい」と発声する。
(13)嚥下パターン訓練(supraglottic swallow)・・・最も代表的な訓練法
嚥下時の呼吸パターンを学習するとともに、咳をすることによって喉頭前室や気道に入り込んだ食物が気管に入る前に排出させる訓練でもある。反射の惹起性が障害されていれば少量(2ml)の水を口腔前庭部に滴下してから嚥下させる。
@大きく息を吸い込んで息を止め
A唾液を飲み込み
Bすぐに咳ばらいをする
(14)Mendelsohn手技
・高齢になると喉頭の位置が下がり、筋力が低下して、喉頭が挙上するまで時間がかかるために食塊落下とのタイミングがずれて誤嚥してしまうことがある。また輪状咽頭筋が開きにくくなり、反射も弱いために喉頭挙上が不十分になりやすい。この訓練は嚥下反射によって挙上した喉頭を、介助によって高い位置で固定している間、食道入口部を開かせる訓練である。
・空嚥下させ、喉頭が挙上し始めたら介助者は輪状軟骨の下に指をあてがい、さらに喉頭を高い位置に上げて数秒間固定する。本人が慣れてきたら介助者なしに行うことができるようになる。
(15)多数回嚥下法
一口の食物に対して複数回の嚥下を確実に行う。
(16)空嚥下
摂食中に咳やむせの様子が見られたら、一度空嚥下させて咽頭部に貯留した食物を食道に送り込んでから次の食物を口に運ぶようにする。重症の嚥下障害患者にはむせが起きなくても頻回の空嚥下をさせる。
(17)横向き嚥下
梨状陥凹の食物残留を絞り出してクリアにするため、頸部を右または左に向けてから嚥下させる。このとき頸部を多少傾けながら行うこともある。むせ始めたら横向き嚥下とうなずき嚥下を交互に行い、残留した食塊をクリアにしてから次の一口を口に運ぶ。
(18)うなずき嚥下
頸部を一度後屈(喉頭蓋谷の残留食物を押し出す)させ、次に前屈して顎を十分に引いた状態で空嚥下(押し出された食塊をクリアにする)を行う。
(H)口腔ケアの要点
@ 調査表、口腔内観察で摂食・嚥下障害が疑われる場合、上記摂食・嚥下診査を行う。
A 診査結果に基づき、障害のある各時期に有効な指導法や訓練法を選択し、口腔ケアプランを作成する。
B プランに基づき、摂食・嚥下指導や訓練及び口腔清掃その他指導を行う。

ケース別実践方法

口腔ケアの基本
介助者が行う口腔ケア
口腔乾燥症の口腔ケア
痴呆症の口腔ケア
摂食・嚥下障害の口腔ケア
誤嚥性肺炎の口腔ケア
経管栄養の口腔ケア
片麻痺の口腔ケア


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